シャドバ以降のデジタルTCGの目指す方向性とは?
この方の記事は非常に感銘を受けた。
ガンダムウォーやMTGとハースストーン・シャドウバースの体験の最も異なる部分は何なのかということに対し明確に回答している。
リアルTCGでは、大会のメタゲームや流行を意識するのは、店舗大会などに出向くようになってからだ。つまり、カジュアルプレイヤーは、「友達と遊ぶ部分」が主であって、特別な体験として「大会・ランク戦」が用意されている。
しかしながら、デジタルTCGではカジュアルどころか、初心者プレイヤーであっても、最初から「大会・ランク戦」に放り込まれてしまう。
さらに、強いデッキレシピがネットに公開されていることで、カードゲームの醍醐味の一つである「デッキビルドの試行錯誤」がオミットされてしまっているのである。
初心者やカードゲームをやらない人が「デッキを組むのが難しいから無理」と言うのは、ここに起因している。
最初から大会に放り込まれるのだから、一定水準の強さを持った「デッキ」が最初から要求される。だから自分で「強いデッキ」を試行錯誤する経験がないままに、他者の言う「強い」デッキを使わざるを得ないのである。
一方(フダンの)リアルTCGは、あくまで「友人」と戦うことが前提である。だからデザイナーズデッキやロマンデッキを投入することができるし、友人限定の極端なメタデッキをつくって遊ぶことも可能なのだ。
ここにおけるデッキビルドは、「客観的な強さ」は想定されていない。自分で考えた「気持ちいいコンボ」や「強い組み合わせ」の追求が目的なので、この作業をつまらないと感じる人はいないはずだ。
デジタルTCGは、デッキビルドの面白さをカジュアル層に体験させることを困難にしてしまった。
逆説的にいえば、「パーソナルなカードゲームの面白さ」「見知った人との対戦」という要素をユーザーに経験させることができれば、それは今までのTCGと違う面白さをユーザーに提供できるはずだ。
このあたりは、フレンド対戦やランクマッチのパーソナル化が重要なのではないかと思う。以下のサンプルを例に取ってみる。
(例)所属地域を選択してマッチのマッチング範囲を地域内に制限する
↓
・友人と同地域に登録し、マッチングに同じユーザーがマッチするようにする。(対戦相手のパーソナル化)
・フレンドマッチでもAランクまでならランクが上昇するようにする。(フレンドマッチのリワード向上)
もちろんマッチング範囲が狭まることで、アクティブ数が重要になってしまうなどの問題が発生するが、ここでは割愛したい。
デジタルTCGも最初のうちは、原体験と同じく「触っているだけで楽しいゲーム」でなければならないはずだ。最初から勝つことを目的としたゲームはあまりにも敷居が高い。
「デッキビルド」や「プレイング」が難しいのではない。
最初から正しい段階を経ずに、難しい「デッキビルド」や「プレイング」を要求してくることが問題なのである。
企画の考え方について
企画書、それはゲーム作りにおいて最初に我々ゲームプランナーに要求されるものである。
今やゲームとはチームビルディングの産物であり、各々が「このゲーム面白いっすよ!!!」という企画書はマズ通らない。
そこで、自分なりの企画の考え方を整理して、ゲーム業界の諸兄に意見を伺いたいと思う。
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◆世界創造型
https://www.google.co.jp/amp/s/s.inside-games.jp/article/2013/08/25/69774.amp.html
「ユーザーに与えたい体験」をまず選び、そこに向かって各種ギミックを追加していく形。
「ユーザーに与えたい体験」の発見には、勿論今の社会の分析から入る必要があるが、理論がしっかりと固まっていれば、文中にもあるように、 非常に否定しにくい企画となれる。
(例)現代人は時間が忙しく、ガッツリとしたゲームは合わない
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片手で遊べる操作性で爽快感のあるアクションゲーム
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「武器よさらば」など。
ライトフライヤー社の製作するゲームはそういった現代人の要求に応えたゲームを製作できている。
この考え方で進める場合は以下の二つが重要となる。
・ニーズに対する「解答」がチーム内で意思統一できているか
・ニーズに関する理解が正しくできているか
とにかく企画で一番マズイのは、評価が「各々が面白いか」という非常に曖昧な基準によってなされることだ。
我々はプロデューサー・ディレクターが好きなゲームを作っている訳ではない。
ユーザーが楽しめるものを作っているのである。
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◆問題分析型
上記のニーズ型は完全新規を作る時には役に立つと思うが、続編や悪い言い方をすればパクリを作る時には、こちらの考え方の方が良いと思う。
こちらは同種のゲーム(カードゲームであれば、ハースストーン・シャドウバース・デュエルエクスマキナなど)を徹底的にプレイして、各ゲームの面白いところ、問題点をすべて書き出すのである。
ギミックの追加において、過去のゲームが失敗した・気づかなかったポイントを避けることができるのは、後発ゲームの大きな利点である。
勿論、問題点を解決したらユーザーが来るかと言われたらNOである。
しかし、同種ゲームを研究する中で、メインターゲット層は自ずと絞られてくる。
そこにマッチする「このゲームだけの面白さ」があれば、企画の実現は大きく前進するのではないだろうか?(社内審査的にも、セールス的にも)
denaのデュエルエクスマキナは、基本システムはHSを踏襲しつつも、地形とマスといった要素の追加だけで新たな体験に成功していると言える。appの評価も4以上と好評だ。
(まぁ現状セールス的には大成功とは言えないが)
この考え方で進める場合は以下の二つが重要となる。
・先行例の何が問題か についての意思統一
・メインターゲットの詳細な設定
何が問題かの統一ができていなければ、これまた企画が迷走し始めるのがオチである。
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ゲームという個人で感じるものが異なるものを作る以上、考えが異なるのは仕方ない。
ただ、考えのベクトルが皆違う方向を向いていると、無駄になる思考量が多すぎるのである。
まず方向性を統一し、一定の評価基準を持って企画を進めていくことが大事なのだと思う。
ここまで読んでくれて頂いた諸兄には感謝を送りたい。
以上